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2014年5月3日土曜日

志賀直哉とジャンボ鶴田

 皆さんは才能というものの有る無しで悩んだことはありますか。端からは努力をしているように見えないのに、図抜けた才能で同業他者を圧倒してしまう人がいるものです。志賀直哉という作家は、そういう部類に属する人だったのではないでしょうか。作品論は手に余るので、人物像を追いかけてみます。
3つエピソードがあれば、その人となりが分かるとニーチェが言ってますから、聞きかじりのを以下に3つ。
①ある日、通りがかりの公園で草野球をやっていた。志賀は近くで見ようと養生中の芝生に踏み込んだが、そこの管理人に威丈高に注意された。その態度に切れて、管理人に殴りかかった。
②祟りがあるというお地蔵さんの噂を聞きつけた志賀は、そのお地蔵さんをわざわざ蹴飛ばしに出かけた。後に蹴飛ばした方の足から腰にかけてが動かなくなり、何十日間か寝込んだが、それでも祟りを信じなかった。
③作品には否定的だった中村光夫だが、志賀本人に会った時、志賀の人を魅惑してやまない危険なオーラにびびった。
どうでしょう?あの簡素な小説とは違う人間が浮かび上がってきましたか?案外、ああいう小説こそ傍若無人なところがないと書けないのかもしれません。こういう人にものを書かれると手も足も出ない、と感じた同時代の作家は多かったのではないでしょうか。

暇にあかせて、志賀直哉に匹敵する才能の持ち主って誰だろうと考えていたら、どういうわけかジャンボ鶴田が浮かんできました。自分の才能を持て余したような試合運びは、相手レスラーにとって、絶対的な他者性として屹立していたのではないでしょうか。で、3つのエピソードを手短かに。
①60分ドローの試合後、相手の長州力はロッカールームで動けず。鶴田はシャワーを浴びてから飲みに出かけた。
②当時最強の呼び声高いブルーザー・ブロディでさえ、鶴田に勝った時は感極まって涙を流した。
③そもそもバックドロップの落下角度が凄すぎる。

ジャンボ鶴田のジャーマンスープレックスが描く弧の美しさは、志賀直哉作品の静謐さに似ている気がします。

『雨蛙』志賀直哉 改造社 大正14年初版 裸本 
                背ヤケ SOLD OUT
『ジャンボ鶴田の受験は格闘技だ』ジャンボ鶴田 
        ごま書房 1996年初版 帯 600円

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