ページ

2014年6月17日火曜日

ぽっちゃりボーイの夏

 この国の情報発信基地としての役割を担う眠らない街、八丁堀。昼時ともなれば、おいしいランチを求めるエリートサラリーマンたちで街はひとときの喧噪に包まれる。こんな戦場のような街でも、まれに子供の姿を見ることがある・・。
 午後の気怠い時間帯、いつものように傍目からはぼんやりと、その実、脳内では膨大な情報量を処理しているつもりでパソコンの画面に向かっていると、外から子供の声が聞こえてきました。この界隈は勤め人しかいないと思っていたので、意外に感じて窓から下をのぞくと、前の道を小学三年生ぐらいの男子が1人でてくてく歩いていました。歩いているというよりは、小刻みに縦に揺れながら足踏みしてる感じでしょうか。けっこう太めなので、尻まわりの肉がブルブル揺れています。やけに軽そうなランドセルもいっしょにガチャガチャ揺れて、ブルブルガチャガチャとせわしない。何をひとりごとを言ってるのかと思ったら、どうやら歌を唄っているのでした。
 よく聞いてみるとその歌詞は、霊的存在の有無を自問自答しながら、その対抗手段を画策する少年の不安を謳ったもので、おそらくは誰もが知ってる歌でした。彼は声変わり前の甲高い声でつぶやくように唄いながら、突き当たりを左に折れていきました。彼がもし店に入ってきて、何かおすすめの本あるかい?と聞いてきたらどうしようかと思いました。

『ゴーストバスターズ−冒険小説−』 高橋源一郎
講談社 1997年6月30日初版 帯      
600円

0 件のコメント:

コメントを投稿