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2014年8月30日土曜日

神話作用

 「スナックますく堂」という名のおそるべきイベントが開催されると聞きつけて、仕入がてら行ってみました。開催場所はイベント名の通りますく堂にて。この店の、さながら記紀の頃より存在していたかのような佇まいは相変わらずで、奥に鎮座する店主の増田さんは、言うなればアマテラスオオミカミということでしょうか。ことによったらスサノオノミコトかもしれませんが。そんなトランスジェンダー的存在の店主の隣のスペースでは、駄々猫さん主催の喫茶が1日限定で開催中。ということで、コーヒーと啄木サンドなるものを注文。蟹がはさまっていて、それを泣きながら食べるという趣向なのかと思いきや、ハムサラダのサンドイッチでした。大いなる盛り上がりを見せる喫茶の喧噪に誘われたのか、ドア1枚でつながる隣店から増田さんが出てきて、コーヒーを注文。薄暗い場所から顔をのぞかせるあたりは、ちょっとアマテラスっぽいと言えるでしょうか。


 
 




土錘と石錘 SOLD OUT
弥生〜古墳時代、縄文時代
文字以前の時代の生活道具

2014年8月29日金曜日

迷惑千万

8/30(土)は仕入のため14時からの開店です。
よろしくお願い致します。

 仕入や所用のために変則的な営業が続きまして、皆さまにはご迷惑をおかけ致しました。と言っても、おそらく多くの方は、いやべつに迷惑なんてかけられた覚えはない、と思われることでしょう。自分の預かり知らぬところで営業している古本屋の開店時間がどう変わろうと、生活に支障をきたすことはないのですから。もっともな話ではありますが、店主としては寂しいことです。
 どうしても書肆逆光に行きたくて、人員不足の勤め先から無理に有休を取得して来たはいいが、臨時休業だった。がっかりして次の日仕事に行くと、居場所がなくなっていた。仮にそんな方がいらしたとしたら、これは本当に迷惑をおかけしたと言えます。法的な責任を問われることはないにしても、明らかに寝覚めの悪い事態です。だからと言って、再就職先の斡旋や金銭的な補助は、まったくの能力外。どうすればいいでしょう。古本屋のなり方をお教えするべきでしょうか。古物取扱免許を取るだけなので、特に教えることもないのですが。そしてそれは、あらゆる選択肢の中で輪をかけて迷惑な気がするのです。


『変った種族研究』
吉行淳之介 講談社
1965年1月20日初版 装幀 川島勝 写真 渡部雄吉 
函セロテープ跡 見返し写真頁糊剥がれ跡        
               
吉行と23人の対談集。メンツは野坂昭如、      
長沢節、殿山泰司、加賀まりこ、武智鉄二など
一筋縄ではいかなそうな人選。       

SOLD OUT         

加賀まりこは吉行淳之介相手に
小悪魔ぶりを全開。当時二十歳。

2014年8月27日水曜日

ハーメルン

明日8/28(木)は仕入と所用のため臨時休業いたします。
8/29(金)・30(土)は仕入のため14時に開店いたします。
どうぞよろしくお願い致します。

 先ほどからボコンボコンと何かを殴打するような音が、店の外から聞えてきます。調子っぱずれながら、明らかに人為的なリズム。小学生男子がゴミ捨て場の段ボール箱でも叩いているのかと思って外を見ても、音の出どころを確定できません。それはまるで、微かな風に乗って世の果てから流れてくる呪術的なパーカッション。界隈の人間すべてをトランス状態に陥れる地獄の鼓動。そのうち、頭脳警察の世界革命戦争宣言でも聞えてきやしないかと耳をそばだてるも、歌声は聞えず。1階のビストロの夕方の仕込みの匂いが、鼻を突くのみ。お腹が空いた・・。そして現時点での来客はゼロ。この音が町から人が消えた原因!?いや、人は普通に歩いている・・。とすると、この事態は単なる営業努力不足?だとすれば慌てることはありません。原因さえ分かれば一安心です。ということですので、皆さまのお越しをお待ちしております。


 関根弘は工場労働者から詩人になった。    
プロレタリア思想を基盤に、アヴァンギャルドと
リアリズムの融合を目指した。        
『死んだ鼠』
関根弘 飯塚書店 1957年12月20日初版



SOLD OUT

2014年8月25日月曜日

いざキャマクラ

8/26(火)は所用により17時30分に閉店いたします。
8/28(木)は仕入と所用のため休業とさせていただきます。
8/29(金)は仕入のため14時からの開店です。
イレギュラーの営業が続きますが、なにとぞご了承くださいませ。

 ロングトラックフーズという惣菜屋さんのかき氷を食べに鎌倉まで行くという暴挙に出ました。古物業者としての喫緊の課題がそこに含まれていたというわけでは一切なく、とにかくかき氷を食すという行為の純粋性を際立たせるためだけに、残暑の古都に赴いたわけです。とはいえ、せっかくの鎌倉ですから、まずは鶴岡八幡宮境内にある神奈川県立近代美術館鎌倉館
1F中庭から望む借景。蓮は花の見頃は
過ぎていますが、葉の連なりが見事。
入ることに。展示は田淵安一。自分にとっては馴染みのない画家でしたが、水彩や色鉛筆画が良くて、市場に出たらいくらまで出せるか算段しながら見ました。ひとしきり脳内入札を済ませると、すっかり疲労困憊。ここは坂倉準三設計で、近代美術館としては日本最古とのこと。中庭を見て喫茶店に入るだけでもモダニズム建築の骨子の部分を味わえます。
 そして目当てのかき氷に向って若宮大路を由比ケ浜方面へテクテクと直進。下馬の交差点を過ぎると、鎌倉駅から流れてくる海水浴客と合流し、通りはとたんに賑やかに。ロングトラックフーズにはすでに数名の列ができています。時の幕府の一大事に馬を駆って馳せ参じる関東武士たちの息吹と、いざかき氷を貪らんとする者たちの熱気が交差する場所。皆、もののふのような目付きで順番を待つ。ということはなく、麦わら帽子&白のガーゼシャツ率が高い雰囲気の店です。




ここに写っているシロップをすべてかけます。
ピーチ、ネクタリン、抹茶、なんとかベリー、
最後に和三盆。それしか覚えていません。  


由比ケ浜
ここまで来て海を見ないわけにはいかないので、夏の海を見物。サザンオールスターズ的というよりは真心ブラザーズ的・・いやむしろワイルドワンズ的と思わせる風景でした。

  
惣菜屋さんのすぐ近くで開いていた
 ガレージセールにて入手。     
名のあるデザイナーの手によりもの
   でしょうか。完成度が高いです。    
SOLD OUT
    
ボンジュールパンサーという商品名の
ミネラル補給食品。スイス原産。その空き箱。
  

2014年8月22日金曜日

秘密道具の件

8/26(火)は都合により17時30分に閉店いたします。
8/28(木)は仕入及び所用のため休業いたします。
なにとぞご了承くださいませ。

 古物業者にとって最も有効なドラえもんのひみつ道具はなにか?おそらく業界内の8割以上の人間が、程度の差はあれ、この問題に突き当たったことがあるはずです。単純に考えて、まずタイムマシンは挙がるでしょう。1932年の東京に行って、ボン書店が刊行する本を片端から買い占めて来るぜという人もいれば、安土桃山時代にタイムスリップして、唐津の茶碗を大人買いしますという人もいるでしょう。妄想してる分には大変楽しいのですが、いざ行くとなった時の滞在準備にはずいぶん手間がかかりそうです。各時代に相応の格好を手配して、その時その土地の物流事情を把握しておかなければいけません。貨幣経済が流通しているのならば当時のお金を、物々交換であれば取引を成立させるに足る物を用意しないといけないのです。また、言葉の問題も大きいでしょう。外国ならば当然のこと、同じ日本であっても現代の記号体系がそのまま通じるとは思えません。縄文時代に行って、土器をいくつか見繕ってきますという人は特に注意です。もっともこの場合は、ほんやくコンニャクを使えば解消しますが。
 どこでもドアを挙げる人もけっこう多いと思います。輸送の手間を削減できますし、なにしろ交通費が不要になるのは何にも増して大きなアドバンテージです。あるいは、このままどこか遠くへ行ってしまいたいという人もいるかもしれません。使い方は各人さまざまですね。
 タケコプターはどうでしょう。このまま大空へと飛び立ってしまいたいという人がいるくらいでしょうか。 
 自動質屋機があれば、飛び立つ前になんとかなるかもしれません。物を入れると、その値打ちにふさわしい現金が出てくる道具です。資産が即現金になれば、破産は回避できるに違いありません。
 このように人はことドラえもんの道具となると、際限なく妄想を展開することができるものですが、そういう自分はといえば、こんな駄文を綴っていないで、シャラガムでも噛んで売れる店づくりに邁進した方がよさそうです。
 
 
 
鳥追い
以前にも一度ご紹介した物です。     
軸部分を持って回転させて音を出し、鳥を 
追い払う道具。当店の在庫の中ではもっとも
ひみつ道具感の強い物です。       



14,000円

2014年8月21日木曜日

不思議な小商い

8/22(金)は仕入のため14時からの開店です。
8/26(火)は都合により17時30分に閉店いたします。
8/28(木)は仕入及び所用のため休業いたします。
不定期営業が続きますが、なにとぞご了承くださいませ。

 今日のランチも中華シブヤにて。ニラ玉&ライス、800円。そんな贅沢ができる身分なのかと自問すれば、否と答えざるを得ない状況ではありますが、常に心を豊かに保つためにもおいしいお昼ご飯は必須。ここはひとつ自分への投資ということで収めたいところですが、だとするとおそろしく回収率の低い運用になりそうです。自分へのご褒美というのもよく使われるフレーズですが、果たして褒美をもらうに価する働きをしているのか、胸に手を当てて考えても、本当のことなんか決して知りたくない!と自分で自分の心を閉ざしてしまう始末。そんな騙し騙しの日々こそが、歴史を作り上げている原動力なのかもしれません。
 騙しといえば、この店にある物どももいくばくかの値段を付けられて、商品として収まっているわけですが、考えてみればこれも不可解な事態です。値段が付いているから、かろうじて商品として認識されるも、やはりどこか詐欺まがいなのでは?という思いも払拭できません。目白の坂田さんが、置いてあるものは店から一歩出ればゴミ、と言っていたのを、聞いた当時は自己韜晦だろうと思っていました。が、同業の末席に名を連ねてみれば、これは別に逆説でもなんでもなくて、毎日ふつうに思うことなんだと分かった次第。ていうか、うちの場合は店にある時点からすでにゴミのような物もあります。という店なのですが、どうぞよろしくお願い致します。



李朝の硯
縦8.7横4厚さ1.2センチ
物としての用は果たしたような窶れぐあいですが、
まだ使えます。                


SOLD OUT

2014年8月20日水曜日

ブレブレ

8/22(金)は仕入のため14時から開店いたします。
なにとぞご了承下さいませ。

 開店前に中華シブヤにてラグジュアリーなランチを堪能。タンメン、600円。優雅な生活こそが最高の復讐である、というスペインかどこかの諺を地で行く昼間からの贅沢。自分の中の点数は4.5ぐらい。食べログを見ると3.46。わりと微妙。このイマイチ信用の置けなさ感が食べログの使いどころなのでしょう。もう3.28〜3.63までの店にしか行かない、きっと3.8以上の店とかは、なにか目に見えない権力が介入して不当に数字を釣り上げているに違いない、という妄想のような信念を持つのも個人の自由です。
 シブヤは少人数制の店内(狭いだけ)といい、細やかな心配り(スープおかわり自由)といい、おそらくマンダリンオリエンタルに匹敵するほどのホスピタリティを発揮してると思っているのですが、受け取り方は人それぞれのようです。ランチタイムは11時〜14時。12時〜13時はサラリーマンでコミケ並に混むので、そこを外すといいでしょう。
 古物の世界も食べログみたいな主観的な相場というのがなんとなくあって、確固たる目を持ってないと、それに左右されて仕入もままなりません。即売会に行っても人の手にしているものが気になって、自分の選んだものがつまらなく見えたりします。ブレずに自分のスタイルを、とか格好良いことはなかなか言えなさそうです。ブレにブレて却って止まって見えるという路線を目指した方がいいのかもしれません。

真鍮製のコップ
高さ10,口径8.1×8.4,底径6.5センチ
1940年頃 イギリス製
真鍮に錫をメッキしていたのが剥げて、 
いい味わいに。まるで中世の食器のよう。



一度抜けた底がリベットで修繕されて、
        味わいにさらに拍車がかかっています。        

SOLD OUT




2014年8月19日火曜日

知床余剰

 埼玉県川越のギャラリー、うつわノートの松本さんが8月10日のブログで当店、書肆逆光について書いてくださっています。もっとも当店についてのレポートというよりは、松本さんの心中を常に去来している思いの発露といったおもむきです。この店が様々な人のいろいろな考えを醸成する触媒の役割を果たす場になればなによりのことです。
 うつわノートは作家ものの器、当店は古本と古道具、扱うものは違えど不要不急の品を売るということにおいては同じ土俵に立っていると言えなくもありません。と言っても、うつわノートは番付でいえば既に東の関脇か西の大関ぐらいには位置している店で、将来の綱取りを嘱望されている存在です。内館牧子も横綱審議委員の退任前であれば、そう言ったはずです。比べて当店は序の口か、ことによったら番付外の前相撲といったところでしょう。ただこの業界、なにをもって勝敗が決まるのかが定かではないので、どうしたら番付が上がるのかはよく分かりません。せめて西前頭十三枚目ぐらいにはいきたいものです。
 松本さん曰く「必要なものが溢れると不必要。不必要なものがもたらす心の必要」。必要なものというのはまず衣食住ですが、それらが満たされても人間万事快調とはいきません。生命活動が功利的に全うされても、人はあんまり幸せを感じないようなのです。で、端から見るとどこかおかしなものに人は手を出すという。松本さんはこれをブログの中で「余剰」と言いました。350円も出せばスーパーで買える飯茶碗を、釉薬がどうとか薪窯がどうとか言って作家ものを20倍も出して購う。直しでつぎはぎだらけの桃山時代の盃に、一生に一度の出会いと思い込んで給料を丸々注ぎ込む。個人差や程度の差はあれ、人はどこか箍が外れた部分があるようです。では、人のそういう性質につけこんで成り立っているのが器屋だったり古物屋だったりするのでしょうか。そうではないと言えません。かと言って、あまり露悪的に開き直ると人相まで悪くなりそうなので、業種柄要注意です。
 このブログでいくら駄文を弄しても答えの出ないことを考えてしまいました。お店にお越しの際に、どうぞ皆さんの余剰を教えてください。


 
 
 
 
 
『蝋人形 第三巻第六号』
二葉書店 1948年6月1日発行
西條八十主宰の詩誌    
経年シミ、裏表紙少破れ  
裏表紙は西條八十作詞、瀧豊作曲の
「娘と白頬」の譜面        

表紙・目次カット 河野鷹思
カット 山本蘭村・北園克衛・横山薫次
アートワークの豪華な布陣に驚き。
執筆陣には城左門、岩本修蔵の名がある。

『黄蜂と花粉』の竹中郁も載せている。
余剰たっぷりの素敵なメンツ。   

SOLD OUT

2014年8月16日土曜日

49

 数字はそれそのものには意味がないのに、その抽象性ゆえに却って過剰に意味づけされてしまいます。代表的なのが4と9。すなわち死と苦で、その音のせいで日本人にとっては忌まわしい避けるべき数字として扱われがちです。だからわざわざ「死に死を足しても苦になって」と三上寛も唄いました。ただ、音のせいなので日本人以外には何も問題がない。「サンフランシスコ49ers」とか「競売ナンバー49の叫び」など、むしろかっこいいチーム名や小説のタイトルに平気で採用されています。
 「オブジェクティフ49」という名前のシネクラブもパリに存在していました。60年以上前の話です。アンドレ・バザンやロベール・ブレッソンが設立メンバーにいて、後にゴダールやストローブも加入する、映画を革新的な観点から支える集団です。ここが開催した「呪われた映画祭」というイベントが、上映プログラムを見ると途方もなく素敵なものです。もっとも今の目で見るから素敵に映るのであって、ジョン・フォードの「果てなき船路」やジャン・ヴィゴの「アタラント号」、ニコラス・レイの「夜の人々」などは当時からしてみれば、商業的成功から外れた見捨てられた映画だったのでしょう。そこにビジネスライクではない映画の見方を新たに組み立てて、ヌーヴェルヴァーグへと続く批評性を確立し得たことが、この映画祭の意義として今に知られています。
 こんなことを聞くと、高度資本主義社会から見放された呪われた古本屋たちが、商業ベースに乗り損ねた版元から出た呪われた本を集めた、呪われた古本市というのをいつか開催してみたい思いに駆られます。馬鹿げた企ても実行されれば、いつの日かそれなりの評価を得る日が来るでしょう。おそらく49年後ぐらいに。




 

『如是説法ツァラトゥストラー』
フリードリヒ・ニーチェ 登張竹風訳
山本書店 1935年12月8日初版 装幀 青山二郎
帙入り外函 四分冊 特装限定50部 
経年シミ 帙背ヤケ        

山本書店は1930年代初頭に山本武夫が興した
出版社。製本・装幀に重きを置いた美しい 
造本が特長。山本自身の生涯に謎が多く、    
山本書店の活動も20年に満たない。    


16,000円

2014年8月15日金曜日

そして誰も

 人間の気配が希薄なお盆の八丁堀界隈。ときおり視界に入る動くものといえば、ビルの間を吹き抜ける熱風が揺らす電線のみ。それはさながら人類創世の頃の風景・・。それにしても先祖との邂逅を果たすという理由だけで、街からこうもいっせいに人が消え失せるものでしょうか。規模の観点から察するに、どうやら東京国際展示場で開催されるコミックマーケットに出掛けたと考えるのが妥当なのかもしれません。
 通称「コミケ」に集まる人の数は、56万人だとのこと。ある目的のために動く人の数としては、メッカ巡礼に次ぐ数字だそうです。今日は開店前に渋谷の東急で開催中の古本市をのぞいてきました。新橋経由で行ったので、ことによるとゆりかもめに乗り損ねた人たちが2万5千人ぐらいあぶれて、周辺は凄まじい混乱を来しているのではないかと懸念しましたが、まったくそんなことはなし。となると、その人たちが渋谷方面に移動して、ついでに古本市を冷やかそうと考えたならば、東急がえらいことになっているに違いない!と慌てて馳せ参じるも古本催事場には56人ほどいるだけ。大きな会場ではないので、それでもけっこう盛況ではあったのですが、コミケとはだいぶ規模が違いますね。なかなか良い本が買えました。できれば56万人分ぐらいの買い物がしたかったのですが、それを許す資力がありませんでした。
 で、コミケですが、これほどの動員がかかるイベントであれば、動く金銭もすごいものでしょう。開催3日間の取引額は、もしかしたら東京古書組合の年間出来高を超えるのではないでしょうか。古物業界もなにか見習うというか剽窃できるところがあるかもしれません。彫三島の扁壺や小井戸茶碗を女の子に擬人化したオリジナル創作を幸田露伴や淡島寒月にコスプレした女子に販売してもらうイベントとかどうでしょう。ビッグサクセスの予感がしませんか?






 
 


『欣求浄土』
藤枝静男 講談社
1969年8月28日初版 函 帯あり
私小説という日本特有の文芸ジャンルを    
特異な方向に発展させた藤枝静男の連作集   
所収作最後の「一家団欒」はお盆に読むべき傑作
1,000円
『ザ・ロード』
コーマック・マッカーシー 早川書房
2008年6月25日初版
わずかな人間以外の生物がすべて死滅した
後の世界を描く散文による黙示録    
著者はノーベル文学賞候補の常連    
SOLD OUT






2014年8月12日火曜日

中和する

8/13(水)14(木)はお盆休みをいただきます。
他は定休の日曜日以外には開けておりますので、
宿題もお墓参りも済ませてしまった方は、ぜひ書肆 逆光へお出掛けください。

 猛暑というほどの暑さではないけれど、蒸し蒸しとして冷房なしではいられず、かと言って付けっぱなしにしてると少し肌寒くなるが、冷房を切るとやっぱり暑いという、よく分からない状態に突入しています。
 暑いときには熱いものを摂取した方が代謝機能を妨げず体には良いという話に倣って、よく分らない気候のときにはよく分らない当店においでになってはいかがでしょうか。古本と古道具を扱って八丁堀のこの地で3ヶ月。信頼と実績はまだ積んでおりませんが、小さなビルの2階で細々と古物業を営んでおります。初めていらした方は「狭っ!」とか「これでやっていけるのか・・」と思われるかもしれません。実際やっていけるかどうかの判断は、25年ぐらい後に先送りしたいと考えております。なにごとも先延ばしに・・そんな怠慢さと鷹揚さが程よくミックスした感じこそが、この仕事では大切に違いないと思い込んで続けてまいります。よろしくお願いいたします。

HORNBYの客車
イギリスの鉄道模型メーカー、ホーンビィの
     ブリキ製客車 1960年代              
             長さ(左右連結機まで)10,7巾3,4高さ4,3センチ             





SOLD






 








2014年8月11日月曜日

胸を借りる

8/13(水)14(木)はお盆休みをいただきます。
他は定休の日曜日以外には開けておりますので、
暇を持て余してしまいそうな方はどうぞお出掛け下さい。

 店に来る途中の都営浅草線車内にて外国人力士をひとり見かけました。本場所興行がないからか浴衣ではなく、グレー地に白のストライプスーツ姿で、手を組んで肘を腿の上にのせて寝ています。ブルガリアなのかグルジアなのか、欧州系の顔立ちと見受けました。相撲はほとんど無知なので、顔を見てもしこ名は分かりません。肩口から腕廻りの分厚い体つきから察するに、幕内なのでしょうか。やがて電車は蔵前に到着しました。力士とはすべからく蔵前に集合するものだと思い込んでいたので、やおら立ち上がり車内が大きく揺れやしないかと身構えていたのですが、彼は起きる気配を見せません。不動の寝姿を保ったまま、次の浅草橋に着くあたりでようやく目を覚ましました。どうやらここが降りる駅らしく、悠々とした動作で立ち上がりその全貌を見せると、途端に車内が狭くなりました。そして半分ぐらいに身を屈めて電車を降りていきました。
 それにしてもあの体の大きさ。もし追っかけていって、ぶつかり稽古の一番でも申し出ていようものなら、おそらく今日は開店できなかったかと思います。危ないところでした。
 
 


東北の三つ組椀
江戸時代前期
ねっとりとした漆と堅牢な塗り。
SOLD OUT






飯椀
口径13,6高さ7,9高台径7,7センチ

羹椀
口径12,4高さ5,1高台径6,9センチ

引入合子
口径11,7高さ3,6高台径6,5センチ





 

2014年8月9日土曜日

逃げ口上

8/13(水)14(木)はお盆休みをいただきます。
他は定休の日曜日以外は開けております。

お盆期間中の中央区は人が界隈からいなくなり、豪壮な建物だけが取り残されたようなシュルレアリスム的光景が広がるそうです。
銀座・日本橋の不思議な景色を味わったあとは、ぜひ当店にもお運びくださいませ。

 お盆でなくとも人が消えたような当店でしたが、開店から3ヶ月が経ち、口コミやSNSで広めてくださった方のお陰もあり、こんな辺鄙な場所にもわざわざ足を運んでくださる方がいらっしゃるようになりました。感謝の念に堪えません。ただ店主のやや怠慢な性格が災いして宣伝告知がままならず、ご来店にあたってはもろもろご不便もおかけしております。慚愧の念に堪えません。
 性格というのは実に厄介なもので、どこか効果覿面な自己啓発セミナーにでも行って治した方がよいものでしょうか。セミナー料金というのは経費に計上するとすれば、勘定科目は福利厚生費でいいのでしょうか。でも一人でやっているから福利厚生はないですね。と、常に経費観念を頭に入れて立ち回っているかのような口ぶりを見せましたが、実は何も考えていないという・・。
 之を知る者は之を好む者に如かず、之を好む者は之を楽しむ者に如かずと言います。楽しんでいればどうにかなるはずという意味でしょうか。ちょっと違いますか。そうやって都合のいいように引用されても平気なのが、論語のすごいところです。



 

 
 
『VOU 158号』
1977年11月


楽しむ者が集まって出来た冊子


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