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2014年9月18日木曜日

発見の発見の発見

9/19(金)は仕入のため開店は14時からです。
9/21(日)は有楽町国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
どうぞよろしくお願い致します。

 開店前に東京ステーションギャラリーで開催中の『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン「遠く」へ行きたい』展を見てきました。1960年代の高度経済成長により金銭的な復興は遂げた日本ですが、公害や乱脈な開発などによる国土の荒廃という代償を払わなければなりませんでした。その疲弊からの脱却としての旅、ということで「ディスカバー・ジャパン」と銘打たれたキャンペーンが、70年代に入ってすぐ日本国有鉄道をクライアントとして大々的に打ち出されたわけです。
 日本のどこだか分からない場所で女性モデルが写り込んだブレブレの写真。いま見てもかなりかっこいいポスターです。期を経るにしたがい、国鉄の意向でキャプションめいたコピーが入ってくるのですが、初期のビジュアルはイメージ戦略の純度が高く、こんなのがまとめて古書市場に出たら良い値が付きそうだなあと思いながら見ていました。藍柿より初期伊万里、キュビスムより青の時代、ヒクソンよりエリオ。より初期の方が人の心を打つのでしょうか。
 ところで、関連展示として放映されていたTVの「遠くへ行きたい」1973年2月5日放送〜伊奈谷の冬〜が面白かったです。伊丹十三が長野の下栗という山奥の村を訪ねるドキュメンタリーなのですが、伊丹の端正で人を食ったようなナレーションと珍妙なファッションが、荒っぽい16ミリフィルムの画面とマッチして、デザインとコマーシャリズムの人としての伊丹十三の面目が遺憾なく発揮されていると思いました。そしてなぜか村の随所にいて、唐突にカットインされる当時18歳ぐらいの高沢順子。フィルムの説話論的持続とは無縁に映っていた高沢が、伊丹のナレーションによって、この子は明日嫁ぐこの村の娘だとおもむろに紹介されます。それで、この放送が最初から疑似ドキュメントであることが正式に明かされるわけですが、そのことの是非はともかく、若き日の伊丹十三と高沢順子が見られるというだけでも入館料900円を払う価値はありました。
 このギャラリーは出口を出ると、東京駅丸の内北口の吹抜けの2階回廊に出る造りになっています。下を行き交う人々が妙に絵になりすぎていて、まるで画面の向こうの出来事のように見えて、一瞬現実から乖離した印象を受けるのも面白いと思いました。



 
 

『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン
「遠く」へ行きたい』展図録
2014年9月12日発行
東京ステーションギャラリー内
トレニアートにて発売中   
2,000円    

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