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2015年5月26日火曜日

新たな富

28日(木)は仕入のため開店は15時頃になりそうです。
29日(金)も仕入です。13時半に開店いたします。

30日(土)はイベント「第3回 詩について・対話篇 」開催のため店舗は
終日貸切となります。ご了承くださいませ。


 時にはゆで太郎以外の蕎麦も食すがよい、という内なる声の導きに促されて行った蕎麦屋の話をしていませんでした。実際は、お客様から旨い蕎麦屋が近くにあると聞いて、いい加減3ヶ月間で70回は通ったゆで太郎にも飽きていた頃だったので、次の日にノコノコ出かけたわけですが。場所は銀座タワーの裏手。それならウチの店からすぐだと思って出かけるも、銀座タワーがどこなのか知らないことに気付きました。タワーというからには、よほど豪壮な建築物だろうと、あたりをつけて歩いていると、うまいこと銀座タワーとしか言いようのない建物に行き当りました。その裏がまた絵に描いたような裏路地。たしかにそこに一軒、目的の店は在りました。屋号は「木挽町 湯津上屋」。こういう小体で瀟洒な蕎麦屋では、せいろの前にまず天ぬきと板わさで一杯、というような粋な真似が出来ないので、ふつうに海苔のかかったせいろを頼みました。透明感があって角の立った蕎麦を久しぶりに食べました。通い続けずにはいられない濃厚な何かを放っている店です。


目眩く路地感。


 この路地を抜けると、すぐ近くに中央区役所があります。首都高が下を走る立体交差の歩道が広く取られていて、高い建物が並んでいながら、抜けた感じがして気持ちがいい場所です。最寄駅は新富町。駅出口近くの小さなビルの3階にあると聞いて訪れたのが、生活こっとうと手仕事の店「さんのはち」です。目の前が大きく開けている上に、隣接する建物がなく、さらに西と南の2カ所に窓が付いているので、自然光が射し込んで居心地の良さを醸成しています。それでいながら、仕入心をくすぐる品も目に入ってくるので、長時間の滞在は危険を伴います。柔らかな雰囲気と危険な匂いを平然と同居させる店主は、計り知れない腕前の持ち主なのかもしれません。







素晴らしい開放感。財布の中まで
開放してしまいそうな危機感。 













 
 
 

2015年5月23日土曜日

泥—ん

24日(日)は乃木神社の骨董蚤の市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。


 どう見ても、第3次安倍内閣は古物業者の行く末に関して何の興味も無く、今後これといった優遇措置(家賃全額免除とか)を講じるとは思えないので、物販が厳しい折、この楽しい生業を一日でも長く続けようと何人かが集まって立てた策が、以下のイベントです。



 現在、各自が泣きながらの仕入中ですので、どういったものが並ぶかは始まってみないと分からないのですが、涙の数だけ楽しいイベントとなる根拠の無い予感がしております。どうぞ皆さま、万障お繰り合わせ且つお誘い合わせの上、お運びくださいますようお願い申し上げます。
 そして、中央区内某所において同時期に開催されるこのイベントにもぜひ足を運んでください。かつて西荻窪のギャラリーブリキ星で実施された同一人物による展示即売会をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。価値の明白なものが並ぶのではなく、価値が生成する場を体感できる展示となるでしょう。
 どうぞよろしくお願い致します。





 
 


 

 


 

2015年5月18日月曜日

人々

20日(水)は仕入のため開店が13時頃になります。

21日(木)は所用のため17時にて閉店いたします。
なにとぞご了承くださいませ。

22日(金)も仕入です。14時に開店いたします。
よろしくお願い致します。


 昨日の日曜日は、久しぶりに東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店してまいりました。上々の天気とあって人出も多いだろうと踏んではいたのですが、遥か予想を上回る人の波でした。目算で650万人ぐらいはいたでしょうか。となると、グラストンベリー・フェスティバルの50倍の動員ということですから、さすがにそこまではいないかもしれませんが、なにしろ凄まじい熱気でした。これだけの人を相手の商売ならば、一大コンツェルンを築きあげることも可能なのでは!と思いましたが、コンツェルンの意味もよく分かっていないし、とにかく小さな事からコツコツやろうと決めました。
 なにしろ久しぶりの大江戸なので、ずいぶんと勝手を忘れてしまっており、たしか有楽町という地名は、織田有楽斎が家康からこの辺りの土地を拝領したとかいうことで名付けられたとかなんとか・・。と、そのへんから復習して臨んだぐらいです。だからと言って、それに因んで上手物の茶道具を持ち込んだわけではなく、いつもながらの謎めいたものを布の上に並べただけです。たくさんの人に見ていただき、且つお買上げいただき有り難い一日でした。次回は6月7日(日)です。
 
 その前日の土曜日には、新村隆慶さんが主催するイベント「書物と音と旅を page.1」が当店にて開催されておりました。新村さんらしい風のように爽やかなイベントタイトルです。らしいと言ったって、世界の大半の人間は、いまだ新村さんの人となりを知らずにいるかと思いますが、この先2回目3回目が開催される予定ですので、機会がありましたら是非ご参加ください。幼少の砌よりヴァイオリンを嗜んでいた新村さんの腕前を堪能し、その後でみんなが持ち寄った本を紹介し合うという、まるで都会の古本屋のようなイベントです。とても和やかで親密な時間でした。これもどんな人たちが集まるかでイメージが変るでしょうから、たとえば生前の立川談志みたいな人が場に1人いたら、ずいぶんと辛辣な雰囲気になっていたかもしれません。個人的には、8代目三笑亭可楽のような人に参加してもらいたいところです。
 それでは今週もよろしくお願い致します。



先に到着し、ヴァイオリンの
 音色を確かめる新村さん。  

新村さんのにぎったおむすび。
具は梅干し。        

曲目はバッハやビバルディなどから。



ビルの窓越しに見る新村さん。


ちょっとしたワークショップ中。


















2015年5月11日月曜日

水の如し

16日(土)はイベント開催のため17時にて閉店いたします。
なにとぞご了承くださいませ。

17日(日)は東京国際フォーラムで開催される大江戸骨董市に
出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。


 埼玉県川越市のギャラリーうつわノートで開催中の「茶人 珮如(ペルー) 台湾茶と道具展」に行ってきました。会期中に何回か催されるペルーさんの台湾茶会の一席に参加するためです。DMが届くなりすぐさま予約を入れたのですが、ウチの店舗運営の状況を鑑みれば、果たして茶など飲んでる場合だろうか!という懸念もありました。しかし結果的には、飲んでる場合でした!
 ペルーさんがお茶を淹れる所作は、あることに熟達した人の動きがそうであるように無駄がないのですが、ことさら熟達しているようには見えないところが、またすごいのかも知れません。しかし見ている分には、すごいとも感じないほどの淡々とした動きです。淡々としすぎて、窓から見える青もみじの葉擦れの音と相俟って、だんだん眠くなってきます。うたた寝するときの、体中が柔らかな薄幕に包まれるような感じに近いでしょうか。自分の場合、ビクトル・エリセの映画のいくつかのシーンを見てると、こういう感覚に陥ります。とはいえ、睡魔に襲われているわけではないので、いきなり鼻提灯を出して眠りこけたりはしません。静かな状態になった心身がずっと続いているといった感覚です。そこでペルーさんのお茶を飲むと、なにやらこの地上の善きものが身体を通過していくようで、澄み切った心持ちになります。こういうのを甘露と呼ぶのでしょうか。なんだか夢の中にいるような経験でした。
 というわけで、少しばかりは爽やかになったと思われる書肆逆光を今週もよろしくお願い致します。







うつわノートさんの2階に
茶席が設けられています。



蓮の葉を懐紙の代わりにしたお菓子。
名のある点心師に特別注文したとのこと。






 
 
 
 

2015年5月7日木曜日

それなりに生きていく

5/8(金)は仕入のため開店時間が14時となります。
ご了承くださいませ。


 想定を上回る販売量により安定供給不能に陥り、発売2日で出荷休止となった炭酸飲料「レモンジーナ」。巷では、土の味がするとか、更にはカブトムシみたいな味だなどと言われて話題沸騰。ここに来てようやく発売再開とのことで、ひとつ飲んでみました。
 土の味と言われて、脳内で土的な味をチューニングしつつ一口飲んでみるも、土との周波数は特に一致せず。ましてやカブトムシに至っては比較対象がないので、どちらかと言えばヒラタクワガタの味に近いかも、ということも言えません。というか、ことさら何か甲虫類を想起することはありませんでした。それなら何の味に近いのかと言えば、オランジーナのレモン版でしょうか。それはつまりレモンジーナのことですから、レモンジーナはレモンジーナの味がするのでした。という凡庸なことを書くためだけに、貴重な時間を費やし過ぎました。そんなことをしている場合ではないのに。それなら何をしてる場合なのかと問われても、よく分からないのですが。
 明日8日(金)から当店の上の階プラグマタにて、日本ではめったに見ることのできない英国の陶芸家ジェーン・ウィラー氏の個展が始まります。これは必見です。その足で当店にお立ち寄りになるのも、なるべく忘れないようお願い申し上げます。


管状土錘
漁網を沈めるためのおもりとしてつかわれた
漁撈用具。発掘時に付けられたと思われる  
タグには「堀の内 台 遺跡」とあります。   
埼玉県所沢の堀之内に台という遺跡があり、 
弥生時代の遺物が多く出土していますが、  
この土錘もその一部でしょう。       
       
SOLD OUT    









 
 
 
 


 
 

2015年5月5日火曜日

まだ誰も知らない経済

 いったいみんなどこへ行ってしまったのか。ふだんは喧噪渦巻く世界経済の発信地として、躍如たる面目を伝えている八丁堀のこの地も、今はまるで復活の日のラストシーンのように、人々はその姿を消し、眼前には荒漠たる光景だけが広がっている・・。
 とはいえ、昭和通りの新京橋交差点から西方向、中央通りに出たときの凄まじい人出を見れば、決して地球上から人類がいなくなったわけではないことが分かります。集まるところには集まり、そうでないところは徹底して過疎化するという、ゴールデンウィークの残酷な現象が如実に現れたわけです。銀座・日本橋方面にお出かけで、人の波に酔ってしまった場合には、どうぞ閑静な八丁堀へとお運びいただきひと息ついてください。
 
 さて、今日5月5日が「わかめの日」であることは誰もが知るところですが、歴史に刻印された出来事として真に記憶すべきは、本日、森岡書店銀座店がオープンしたことでしょう。株式会社として法人登記し、今や代表取締役社長となった森岡さんの代表作「荒野の古本屋」を読まれた方は、氏の茅場町店の運営における様々な苦労をご存知のはず。のしかかる借地借家料や綱渡りのキャッシュフローなど、ひとごとではないのですが、諸々の困難を克服して、二店舗目をそれも銀座に出すなどという荒技は、日本の経営者たちを瞠目させずにはおかないでしょう。その銀座店の運営の核は「一冊の本を売る書店」。ビジネスモデルとか利益構造といった概念を蹴散らす力強いコンセプト。資本主義の次のシステムの到来さえも予感させます。いまだ誰も気付いていない新しい経済の萌芽。その仄かな光が、どうか八丁堀まで届きますように。







5/5(火)〜5/17(日) 「PUNK」沖潤子展
                          13:00〜20:00 森岡書店銀座店                    
                   中央区銀座1-28-15 鈴木ビル1F                                   

ここから書肆逆光までは徒歩6分40秒ぐらい。
 お運びください。             

2015年5月1日金曜日

死すべき運命の人の子に

 素晴らしい詩書を残した版元、書肆ユリイカや照森社の入っていたビルの二階に至る階段が、十三段であったことをユリイカ社主の伊達得夫が書いています。不吉な段数の階段は、また類を見ないほどの急傾斜で、仏文学者や詩人や製本屋の小僧さんなどがここを転げ落ちていったとのこと。当店が入るビルにも、それなりに傾斜のついた階段が備わっていますが、知る限り店主が二度ほど足を滑らせた以外に事故は起きていないようです。段数は十四段ですから、ことさら書くべきことは何もありません。店主に財を成す気配がないのは、階段が十四段であることとは無関係でしょう。
 八丁堀という、飲食以外の小商いをするには完全にアウェーの地で、築五十年を過ぎる小さなビルの十四階段を上った二階の六坪弱の一室で、手持ちの古本と古道具を並べて店を開けたのが一年前の今日でした。我ながらわけの分からない、箸にも棒にもひっかからなそうな店が誕生したぞ!と感慨に耽ったことが懐かしく思い出されます。というか、今も状況はたいして変らないので、本当言えば少しも懐かしくはありませんが。それでも、あの日から地球が楕円軌道を描いて太陽を一周りしてきたことを思えば、仄かに心が暖かくなる気もします。
 ともあれ、曲がりなりにも一年続いたのは、店主の営業努力の賜物であるはずはなく、何くれとなく手を差し伸べてくださったお客様や同業他業の方たちのお蔭であることは、言うまでもありません。やりたい事をやってたらいろんな縁が生まれてきたというのは、どうした因果応報なのか、有り難いことこの上ない話です。
 というわけで、二年目もどうぞよろしくお願い致します。





『乳鏡』田谷鋭 
白玉書房 1957年8月15日初版 帯
セロ剥がし跡 日付書込     
2,500円

ブリキ筒
高さ13×直径6.7センチ
SOLD OUT

シルバースプーン
スウェーデン 19C. 12.4センチ
SOLD OUT