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2015年9月29日火曜日

言葉と物

10/4(日)は有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
能うかぎりの楽しい品を並べますので、どうぞお運びくださいませ。


 先日の土曜日に『詩について・対話篇』という、八丁堀の路地がにわかにサンフランシスコの坂道に見えてくるような、かっこいいタイトルのイベントが当店にて開催されました。詩人が各々書いた詩を持ち寄って、それをダシにあれこれと言葉を交わし合う集まりです。詩人の古溝真一郎さんが主宰ですが、決して仲間内だけの集まりというわけではないので、詩を書いたことはないけど興味はある方、実作してるけど見せる相手がいないという方は、どうぞお気軽にご参加ください。すでに開催は4回を数え、一応当店が存続する限りは続けていきたいと考えています。だとすると次回開催は怪しそうだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それに関しては今のところまだ大丈夫です、としか答えようがありません。
 詩人が詩句を選ぶように本や物を集めてみたい、と当店も思うのですが、古物業者は先行投資として品物を購入しなければなりません。並べた物が一篇の詩のような効果を発揮してくれるかどうかは、店主の裁量にかかっているわけですが、どうしても投資に見合うもの(現金)を回収しなければならない宿命があるので、流通しやすい耳触りのよい言葉のような物を並べてしまいがちです。強度に満ちた詩句のような品揃えをしてみたいものです。
 という夢想に浸りながら、翌日曜日は乃木神社の蚤の市に出店。朝方のそぼ降る雨も止んで、天気の神様は味方してくれたようですが、富を司る神々に果たして振り向いてもらえたかとなると、微妙と言わざるを得ませんでした。とはいえ、詩のような物を並べるところから一点仕入ができたので、良しとします。今週もどうぞよろしくお願い致します。



 
『旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌』ライネル・マリア・リルケ
鹽谷太郎訳 照森社 1941年4月30日初版 見返しシミ     
『若きパルク』ポオル・ヴァレリイ 菱山修三訳         
青磁社 1942年4月15日初版 函               
『海を瞶めて』ポオル・ヴァレリイ 菱山修三訳         
青磁社 1942年1月20日初版 函               
『マルドロールの歌』ロートレアモン 栗田勇訳        
現代思潮社 1969年8月10日2刷 函             
            水鳥の温度計

 


 

2015年9月23日水曜日

赤貧エレジー

26日(土)はイベント『詩について・対話篇』開催のため
店舗は終日貸切となります。
ご了承くださいませ。

27日(日)は乃木神社の骨董蚤の市に出店いたします。
秋空の下の爽やかな散財をお待ちしております。


 ある行為が習慣的に繰り返されるうちに、次第に当初の目的が形骸化して、いつの間にかその意味が変わっていることがあるものです。発生期においては死者を供養する行為であった盆踊りが、現在ではサマーイベントの一環と化しているように。
 当店において、浅草のフルーツパーラーゴトーのパフェを食べることは、骨董市出店の売上高が一定以上に達した場合の自分への報奨であったはずですが、今やメニューに載ってるパフェを完全制覇してみたいという欲望に取って代わっています。そうなると行商の成績がどうであれ結局はパフェを食べて帰るので、金銭的な問題の他に、血糖値や尿酸値などが危険領域に達する恐れに常に苛まれることになります。運転資金の調達手段であった骨董市の出店が、いつの頃からか生活習慣病との闘いになっているという・・。あるいは、こうした意味の変容の連鎖こそが文化創造の要因なのかもしれません。石田純一の「不倫は文化である」という発言は、こうした観点を踏まえてのものだったのでしょうか。
 と、どうでもいいことを書き連ねていますが、今週もどうぞよろしくお願い致します。


楽しい赤貧グッズ
       杉板のトレー、アルミの小皿
歪んだ黒唐津の小碗 SOLD OUT      
初期伊万里盃の残欠 SOLD OUT      

渥美半島産と東京荘埜園のイチジクが
半分ずつのったパフェ。      








 


 

2015年9月15日火曜日

何も足さない

18日(金)は所用で開店が14時になります。
20日(日)は東京国際フォーラムで開催される大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。

26日(土)はイベント『詩について・対話篇』開催のため店舗は終日貸切となります。
ご了承くださいませ。


 当初このブログの目的は、蔓延するグローバリズムに圧し潰されつつある個々人の小さな声を掬い上げ、失われた人間性の回復を目指す闘争への手引きとなる言葉を紡ぐことであったはずですが・・近頃では己の不遇と美味しいものを披瀝するコーナーに成り果てているじゃないか!と、人為的にテンションを上げて、以前のブログを読み返してみました。すると、どうやら勘違いをしていたようで、もう最初から貧乏自慢と身辺雑記だけでした。というわけで、図らずも初心を貫徹していた自分を発見した次第です。これからもどうぞよろしくお願い致します。
 そんな取ってつけたようなご挨拶以外に特に書くことはないのですが、強いて特記事項を挙げるとすれば、次回20日(日)が当店の大江戸骨董市出店1周年なのでした。それを記念して全品1%引き、などという企画は却って不興を買うことになりそうなので、ふつうに販売いたします。秋空の下に映える楽しいものを並べたいと思っています。どうぞお運びください。
 企画と言えば、年の後半はいくつかイベントの開催を画策中です。イベント隆盛の昨今ですが、「ハレとケ」のハレが常態化してしまうと、毎度イベントをやらなければ集客を見込めない、お祭りのインフレーションを引き起こしてしまいますから、按配が難しいものです。迷走の気配がなかなか止みませんが、今週もよろしくお願い致します。


時代鈴(SOLD OUT)とケニアのカウベル
二つ同時に鳴らすと、コロコロガコンガコンと
涼やかさと悠久の大地を彷彿とさせる音色が 
混じってお祭りのようです。        



2015年9月7日月曜日

怒りの葡萄

11日(金)は仕入のため開店が14時頃になります。
13日(日)は富岡八幡宮の骨董市に出店いたします。
どうぞよろしくお願い致します。


 天気予報サイトによれば、昨日の朝の東京の湿度は96%。ほぼ水中にいるのと等しい状態ですから、肺呼吸で生きる人間にとっては由々しき事態です。そんな中を4時起きして、江東区富岡一丁目にある富岡八幡宮で開催される骨董市に出店してまいりました。
 21世紀の初めの頃に、買い手としてずいぶん通い詰めた記憶のある市ですが、なにかしら計り知れない因果の法則によって、売る側に回ることになったのでした。ぼんやりとカートを引き摺り茅場町から東西線に乗り込んで、門前仲町で降りてヒグチ薬局の看板が見えてくるあたりから俄に緊張を催してきました。なんだか百戦錬磨のベテランばかりの場所に、ノコノコと素人が迷い込んだようなアウェー感に苛まれて、足取りが重くなってきました。とはいえ、モジモジしていても始まらないので、受付を済ませて荷解きをして陳列して、あえて場慣れした風を装い、空を見渡して薄笑いを浮かべたりしました。しかし下が砂利で居場所が定まらない感じがして、いつまでも経っても落ち着かず。それでも意想外に多くの方に見ていただき、売上もまあまあでした。
 あくまでまあまあであるにも関わらず、どういう心の働きによるものか変に強気になってしまい、あろうことか帰りにまたもや浅草のフルーツパーラーゴトーに立ち寄ってしまいました。その日のオーダーは「ルビーロマンの入った5種のぶどうのパフェ」1,680円(税込)。意味不明の豪気ぶり。手元の金を使い果たさなければ気が済まない石川啄木的妄念か、優雅な生活こそ最高の復讐であるという安井かずみ流心性に取り憑かれたとしか言いようがありません。どちらにしろ、パフェはおそろしく美味いものでしたが。
 というわけで、今週もよろしくお願い致します。


久しぶりの富岡八幡宮。曇り空。

てっぺんの巨大な葡萄がルビーロマン。

小山雄之輔本房
「火の用心と身の要慎」のチラシ
700円(残り1枚)

葡萄と甘酒の食べ合わせは良くないようです。
牛肉となまず、さつま芋と赤蛙もダメ。   
気をつけましょう。            



 
 

2015年9月4日金曜日

目の眼の芽

5日(土)は仕入のため15時頃の開店です。

6日(日)は富岡八幡宮の骨董市に初出店いたします。朝6時頃から始まるそうですので、
行ったら終わってた、ということのないように早起きして臨みます。
どうぞよろしくお願いいたします。


 株式会社目の眼より毎月1日に刊行されている古美術誌「目の眼」の10月号(通巻469号)に当店が掲載されました。「曽野綾子の美の仕事」という連載にて扱っていただいております。
 このコーナーは作家の曽野綾子氏が古物を扱う店を訪れて、そこで見聞きしたことを過去の体験と織り交ぜながら文章に綴るという体裁を取っているようです。今月号には曽野さんがフランス滞在時に得た、友人の息子のエスプリに富んだ話がまくらに据えられていますが、当店はエスプリにもウィットにも縁遠い店ですから、このまくらは、もうひとつの紹介店舗「No CONCEPT」にこそ相応しいでしょう。No CONCEPTさんの目の眼誌上への登場は、言うなれば国立能楽堂の演目にモンティパイソンがかかるような、一種痛快な異化効果をもたらしているように思えます。当店の場合は、マジソンスクエアガーデンでベーゴマ大会が開催されているような違和感がありますね。
 違和感と言えば、曽野さんは当店がぶち割れた皿や陶片を商品として扱っていることに驚かれたようでした。こんな物に値段を付けて売っていやがると。しかし世の中にはもっと不可解な物を取引きしようしている業者がいますから、欠けた皿なんかはずいぶん保守的な領域です。



 というわけで、皿に使えそうな陶片と文学史的に曽野さんが属する第三の新人の著書を並べてみました。上左から雲たい里の粉引(SOLD OUT)、常滑の甕、常滑の瓦、中左から初期伊万里ふたつ、常滑、唐津甕屋ノ谷窯、下左から庄野潤三『絵合せ』、吉行淳之介『砂の上の植物群』、小島信夫『弱い結婚』、『X氏との対話』。
     今月もよろしくお願いいたします。