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2016年2月25日木曜日

苦悶行くもん

26日(金)は仕入のため14時の開店です。
ご了承くださいませ。

28日(日)は乃木神社の骨董蚤の市。
久しぶりの出店です。皆さまのお越しをお待ちしております。


書肆逆光にて金継ぎ教室を開催いたします。講師は会津の”青い閃光”こと
相田雄壱郎氏です。詳細は相田さんのブログをご覧ください。
カシューやエポキシを使わない本漆のみの直しです。経験の有無は問いません。
漆と器に興味のある方、どうぞ下記アドレスのどちらかにお気軽にお問い合わせ
ください。

相田雄壱郎:aidayuichirou00@gmail.com
書肆 逆光:gyakko3@gmail.com


 名展の呼び声高い日本民藝館『美の法門』に行ってきました。欲しいものがあり過ぎて疲れる、と人から聞いていたので、駅を降りてすぐの東大坂下門あたりから、あらかじめ物欲スイッチを切って臨みました。しかし入って左の朱塗の燭台とか、正面階段踊り場のオシラサマとか、大展示室の井戸茶碗「春山 胸肩」とか縄文晩期の岩偶とか、せっかく切ったスイッチを強引に入れ直さんばかりのえげつない陳列ぶり。
 展示タイトルは、名も無き工人が作るものとその美しさについて、柳が仏教を契機としてある種悟りのような見識に達したことで付けられたそうですが・・、見る方にしてみれば、尽きることなき物欲の無限地獄に落されたかのような苦しみを味わうはめになります。むしろ『地獄の門』がタイトルとしてはふさわしいかと思いました。3/21(月・祝)までの開催ですので、ぜひ苦悶にのたうち回ることをオススメいたします。
 

民藝館の写真というと、
たいてい正面玄関か  
庭の梅のアップになって
しまいがちです。   

仕方なしに庭に佇む地蔵さんを激写。


































2016年2月24日水曜日

ストロベリーフィールズ

25日(木)・26日(金)は仕入のため14時から開店いたします。
28日(日)は乃木神社の骨董蚤の市に出店いたします。
お越しをお待ちしております。


 10日間に渡り開催された伏木庸平個展『うぶの渦』が終わりました。ご来店いただいた皆さま、宣伝告知にご協力くださった方々に感謝申し上げます。
 当店にとっては初めての作家の展示会。何をどうすれば展示として成立するのかも分からず、仮にキュレーターのように振る舞わなければならないとしたら、やはりハラルド・ゼーマンばりに髭を生やさなくてはいけないのか?だとしたら、会期が始まるまでにあんなに髭を伸ばすことができるだろうか、そんな難題に頭を悩ます日々が続きました。実際には、伏木さんの中ですでに展示イメージが出来上がっており、搬入当日の什器と作品の配置も、ほぼ迷いなしに決定したと言っても過言ではありませんでした。特に店主が髭を生やす必要もなかったのでした。
 日頃、得体の知れない物品を売買していながら、作品が陳列された店内の異様さには戦きました。とはいえ、それは異物が空間を侵犯してくる不快な感情ではなくて、意外な美しさに胸が高まり過ぎて、困惑するような気持ちだった気がします。物の方で勝手に居場所に収まってくれたので、キュレーションなどは不要でしたし、そもそもキュレーションの意味をよく分かっておらず、ただ言ってみたいだけだったようです。10日も同じ空間にいると情が移るものなのか、撤収後はぽっかりと胸に穴があいた気持ちに襲われました。作品を思い出すよすがとして、panoramaの大隅さんが素晴らしい写真を撮ってくださったので、ぜひこちらをご覧ください。
 会期終了の次の日は大江戸骨董市に出店したのですが、寂しさを埋める代償行為なのか、たいして売れてもいないくせに、帰りにフルーツパーラーゴトーに寄って、3種のいちごの食べ比べパフェ(税込1,380円)を食べてしまいました。垂直に連なった苺たちの鮮やかさは、たしかに伏木庸平の作品群を思わせなくもないのでした。




上から千葉県産の紅つやか、千葉県産とちおとめ、福岡県産あまおうDX。

2016年2月20日土曜日

ひょん

ただいま当店にて開催中の伏木庸平『うぶの渦』。20日が最終日です。
困惑、衝撃、戦慄、恍惚、陶酔・・、さまざまな情動が渦を巻いて
遍在する怖るべき空間です。お見逃しなく!

21日(日)は東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。


 書肆逆光という店は、ふだん古本やあまりよく分からない物を売買している場所なのですが、現在いつにも増して得体の知れないものが陳列されております。伏木庸平(ふせぎようへい)という人物が作り出した、とりあえず刺繍作品と呼んでおきますが、どうにも名付けようのない物体です。一年ほど前にお客さんとして足を運んでくれていた伏木さんと、ひょんなことからこの店で展示をしようという話になったのですが、「ひょん」というのは、もともとホヨだかヒョウだかいう寄生木のことを云うそうで、その不可解な生態を指して、世の突飛な事態を意味する言葉として派生したそうですから、まさしく「ひょんなこと」で展示の運びとなったのです。
 異様に集積した糸によって、縒れ、捻れ、凸凹し、波打った作品は、孤独のうちに営々と築き上げられたシュヴァルの理想宮のようにも、前衛的なオートクチュールのようにも見えてきます。刺繍というのは手の内でちくちくと動かしていくものですから、作品の見映えに比して、製作に生じるアクションは小さなものです。それをひたすらに繰り返すまさにひとり文化服装学院の趣き。作品を握り続けるあまり、いつしかそこに作家の体臭が染み付くことさえあるそうで、ある時、自分では知覚し得ない自身の匂いを人に指摘され、身体性が図らずも作品の外に漏れ出してしまったことに作家は衝撃を受けたと言います。作家のそうした鋭敏でささやかな批評性が、作品の情念に満ちた野放図さと極度に知的な洗練さを共存させているようにも思えます。





 
 

 


 


 
 

2016年2月14日日曜日

バケモノガデタ スグコイ

ただいま書肆逆光では伏木庸平『うぶの渦』を開催しています。
延々と刺し続けられる刺繍糸が形づくる異形の美。20日(土)迄。


 珍渦虫の正体判明と重力波の観測成功に世間がにぎわう中で、それらに負けず劣らず驚嘆に値するものとして人の口の端に上っているのが、ただいま当店で開催中の伏木庸平個展『うぶの渦』です。
 伏木庸平の作品の要諦は、ごく簡単に言えば、布や紙などの支持体に刺繍糸を縫い付ける造形物ということでしょうか。ただ、その縫い付けようがあまりに過剰なために、糸のテンションで支持体は捩れ波打ち、動物の内蔵のような奇妙な地勢のような形を見せています。一度視覚に入れば、うねる表面の連続を追ってしまい、容易に視線を外すことはできません。作品だけ見れば、棟方志功と深沢七郎が合わさったような作者を連想しますが、実際はいたってハイセンスな青年で、POPEYEのシティボーイの部屋特集に載っていたって不思議はないぐらいです。こうしたギャップもまた人を惹き付ける要因になり得るかもしれませんが、それをギャップと感じるのはこちらの勝手な思い込みで、本人にしてみれば、実生活と作品は連続線上にあると言いたいところでしょう。
 これだけの強度の作品でありながら、製作と云えば手元で刺繍糸をひたすら刺していくだけなのですから、実に地味な行程です。製作をことさら特別な行為として考えず、テレビを見ながら、居酒屋で呑みながら、誰かと世間話をしながら縫い続けることもあると作家は言います。日常と分断されない営為の中で、こんな物がおもむろに産み出される驚き自体が、物を作ることの原初性を提示しているようにも思えます。
 森美術館、横浜美術館、日本民藝館、東京国立近代美術館など、いま見るべき展示のひとつに加えていただければ幸いです。皆さまのお越しをお待ちしております。



陽が落ちてからのキャンドルによる
イルミネーション。バレンタインの
デートスポットにも最適。    

高島野十郎的な、ゲルハルト・リヒター的な。


 


 
 
 
 
 
 


 

2016年2月3日水曜日

尻燃ゆ

2/11(木・祝)〜20(土)は伏木庸平個展『うぶの渦』を開催いたします。
現代アート畑に突如降臨した偏執的な刺繍好きか、美術の制度を攪乱する
トリックスターか。確かめにいらしてください。

7日(日)は東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。

9日(火)・10日(水)は展示準備のため店舗はお休みいたします。


 店にいると底冷えして仕方ないので、けつっぺたに2枚ホッカイロを貼ってみたら割と快適。ただ座り続けていると、体重でカイロが圧着して尻が燃えそうです。
 さて、土曜日に見たうつわノートさんでの展示『衝撃の美』の衝撃によって自我が崩壊しかけていたので、言わば呪いを解くつもりで、東京国立近代美術館で開催中の『恩地孝四郎展』に行ってきました。しかし『博物志』や『飛行官能』、『蟲・草・介』などが、欲しけりゃ持ってけと言わんばかりに陳列されていて(妄想)、どうやら物欲という別の呪いに取り憑かれてしまったようです。
 暦の上では春になるというのに呪われっぱなしの今日この頃、いっちょ祓い清めてもらおうかと、店の近くの神社で行われる豆まきに出向きました。路地裏の物陰に位置していて、ふだんは気に留めることのない神社ですが、今日ばかりは近所の方々も出てきたのか、狭い道いっぱいに人が溢れています。時間になると、年男・年女たちが交代で軽トラックの荷台に乗り込んで、豆やら菓子類やらを撒きはじめました。山なりにそっと放る人もいれば、現役時代の山口高志ばりのストレートで投げつけてくる人もいます。真空パックの切り餅が眉間に直撃しそうになった瞬間は、これまでの様々な記憶が脳内に明滅しました。本当に死はいつも生と隣り合わせなのだと思いました。
 では、今週もよろしくお願い致します。


後列でクールに見物しているつもりでしたが、
気づけばいろいろ手にしていました。    


モッシュ&ダイブができそうな人出。

密やかに佇む社




当店の在庫の中から恩地孝四郎関連書を探してみました。






『象徴詩集』三木羅風
ARS  大正14年5版 函 装幀 恩地孝四郎 
本体背少ヤケ

4,000円



『書窓 5』アオイ書房
1935年 第一巻第五号
編集 恩地孝四郎
表紙外れ

中西悟堂、前田鐵之助、北園克衛etc.
4,000円