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2016年3月22日火曜日

持たざる者ども

25日(金)はイベント『書物と音と旅を page6』開催のため店舗の営業は
    18:30までとなります。ご了承くださいませ。
27日(日)は乃木神社の骨董の蚤の市に出店いたします。
30日(水)は金継ぎ教室開催のため店舗は18時までの営業となります。

4月2日(土)は所用のため店舗は臨時休業、夜は金継ぎ教室を開催いたします。
3日(日)は有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
10日(日)は長野県松本市大手二丁目にある木工作家三谷龍二氏のショップ『10センチ』脇の空き地で開催される10センチノミの市に出店いたします。


 美の法門に再びの訪問、とライムを踏みながら駒場の閑静な住宅街を練り歩いていると、豪邸の庭先や公園に植わる樹々の蕾のほころびが目に入り、否応なしに春の訪れを知らされます。どれか一個くれるならば、何をもらっておくべきかを決めておかなければならないと思い立ち、日本民藝館『美の法門』の最終日に二度目の来訪を果たしました。とは言いながら、ものを見るなり即座に、これはゆで太郎の肉そば何杯分だろうか、と卑近なものに換算してしまうので、目が曇りがちになるのも事実。素直に井戸茶碗あたりをもらっておけばいいような気もしますが、分不相応のあまり手にするや否や、六本木の大店に換金しに走ってしまいそうな予感もします。
 それにしても、もらうことばかり考えているというのも浅ましいものです。曲がりなりにもプロならば、いくらまでなら出せるのかを算段しなければいけないでしょう。しかしそう思った途端に気持ちが萎えて、トイレの前に置いてあるチラシばかりをもらって帰途につくのでした。
 今週もどうぞよろしくお願い致します。


鶏文様の小皿2枚(Sold)と炬燵の火屋。



 

2016年3月14日月曜日

ハーバーフューチャー

15日(火)・16日(水)は出張のため臨時休業いたします。
18日(金)は仕入のため14時半からの開店です。
19日(土)はイベント『第7回 詩について・対話篇』開催のため店舗は
      16時半で閉店いたします。
20日(日)は有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。

どうぞよろしくお願い致します。


 横浜美術館で開催中の『村上隆のスーパーフラット・コレクション---蕭白、魯山人からキーファーまで---』を見てきました。聞きかじったところでは、見るのに相当なエネルギーを要するとのことなので、まずは腹ごしらえです。蒐集という欲望の渦巻きと対峙するならば、手づかみで生肉を貪り喰うぐらいの野性味は見せておきたいところです。石川町まで出て、下北沢の伝説的カフェ、チクテで働いていた方が始めたというCafe de LENTOに立ち寄り、豪快にビーフシチューのセットを注文。ニース風サラダにライ麦パンが付いていますが、カフェ分量なのでこれだけではもの足りず、デザートにホットコーヒーとチーズのタルトもいただきました。どれもとっても美味しいんですヨ♡
 というわけで、食料をガツガツと胃袋に収めたあとは、みなとみらいの美術館にスタイナー兄弟ばりに駆け込んでいきました。美術館正面、まだ入場もしていないのに目に飛び込んでくるのは、アンゼルム・キーファーの「メルカバ」。なんだ、これは!?どうやって持って帰ってきたんだ!輸送料はいくらかかるんだ?倉庫の年間借家料は一体どれくらい・・。とチケット代金も払い終えていない段階で飛び込んでくる疑問符の洪水。たしかにこれは疲れそう。
 怒濤のキーファー黒い三連星に混じってぽつんと置かれているのが、経年変化でちょっといい味になった金庫。精算した売上の保管場所?もしや、しまい忘れ?と思いきや、マウリツィオ・カテランの作品でした。これは結構欲しい。チケットを提示してエスカレーターを上るとすぐ左手に、Mr.の絵。その下に設置されているのは、またもカテランの作品である小さなエレベーター。アルテ・ポーヴェラつながりでしょうか。そこから先は、もはやどう順路を取っていいのか分からない混沌の館です。
 コレクションもまたその人の作品であるとはよく言われることですが、ヒエラルキーをつくらない一挙陳列ぶりは、お宝の山というよりは夢の島のようです。通常の蒐集ならばなんのジャンルにせよ、ピンからキリのピンを選択して手元に置きたいと思いそうですが、どうもそうではなくて、出向いた先で目にしたものを買ってみたという印象です。なにやら物を集める行為の原初性に立ち会っているようで、空恐ろしい気持ちになります。サクセスしたアーティストの、金にあかせて買い集めたもののお披露目会では全然ありません。文脈は見る側でつくらなければなりません。たしかにエネルギー消費の大きい展示会です。やはりポッケに生肉でもしのばせておいた方がいいようです。



マウリツィオ・カテランっぽく。
「コール天地の鹿のぬいぐるみ」
足から耳まで15.8×胸から尻尾まで9センチ
SOLD 

 
 

2016年3月10日木曜日

拾弐

11日(金)は仕入のため開店が14時になります。

15日(火)・16日(水)は出張のため臨時休業いたします。
なにとぞご了承くださいませ。


 ことさら報告することでもないのですが、先日の日曜日の大江戸骨董市出店のあとに、浅草にあるフルーツパーラーゴトーという果物を使った甘味や飲料を出す喫茶店に行ってまいりました。今回そこで注文したのが「12種の柑橘系のパフェ」1,380円(税込)です。西洋占星術は、天球上の黄道を中心とした惑星の運行域を黄経で12等分し、誕生時にその内のどこに太陽が位置していたかでその人の運命を占います。さらに言えば、1982〜83年のヨーロッパ遠征において、前田日明がカール・ゴッチから直伝されたスープレックスもたしか12種類。かくも12という数字には、どこか超越的な雰囲気がつきまとっているようです。ですから、行商での売上の多少を問うてる場合ではもはやなく、柑橘類が12種も乗ったパフェがこの世に存在すると知れば、否応なしに食べに行かなければならないのでした。大事な現金と引き換えではありますが、考えてみれば貨幣経済の世の中だからこそ、これほど美味いものがたやすく食べられるのだとも言えます。旬のものですので、お早めにどうぞ。


上段:金柑(たまたまエクセレント)、甘平、
いよかん、日向夏、はっさく、文旦
下段:デコポン、晩白柚、グレープフルーツ、
はるみ、オレンジ、たんかん

 当店にあって12種揃うもの・・。むりやりセレクトしてみました、「12種の編み編み系」。


左から、繭籠 Sold、ラオスの筌 Sold、たも網の枠 Sold、柄付の笊、
網目の貫入の入った堅手茶碗 Sold、アルジネート印象材のトレー、
炬燵の火屋①、② 両方Sold、水切り old、鋤簾、格子文の木綿のハギレ Sold、
黒塗りの籠 Sold








2016年3月3日木曜日

姉妹店

3月4日(金)・5日(土)は所用のため17時30分に閉店いたします。
なにとぞご了承くださいませ。

6日(日)は東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。


「相田雄壱郎金継ぎ教室」にはたくさんのご応募をいただきました。
まずは募集を一旦締切りとさせていただきます。ありがとうございました。


 常にそして確実に、ここは自分の居場所ではないと思い知らせてくれるのが、銀座メゾンエルメスです。こちらの8Fギャラリーで開催中のシャルル・フレジェ『YOKAINOSHIMA』を見てきました。このギャラリー、辿り着くためにはドアマンに扉を開けてもらって、1Fからエレベーターに乗らなければならないという、怖るべき導線設計になっています。せっかくだからスカーフの一枚でも買っていこうかな、などという考えが頭をよぎることは決してなく、入口からエレベーターまでの直線距離を、できるだけ視野を狭めて過ぎることに専念しなければなりません。美を味わうとは畏れに身を任せることであるという、忘れかけていた事実を思い出させてくれる場所でもあるのです。
 シャルル・フレジェはフランスの写真家で、人類学的なアプローチに基づいて、世界各国の民族衣装や祭事の仮装などを撮っています。今回の展示写真は日本各地に見られる神事や祭事の仮面・仮装の肖像で、それらは「YOKAINOSHIMA」=「妖怪の島」という観点で撮影されました。写真はあくまで肖像としてセットアップされたもので、実際の祭事を垣間見たドキュメントではないようです。どれも綺麗にパネル化して陳列されており、青空の下で撮られたと思しきそれぞれの肖像には、日本の民間信仰がイメージとして伝える仄暗い怪しさは見られません。何やらオシャレ民俗学の趣きです。ですから、先のうつわノートでの『衝撃の美』の衝撃はまったく無いのですが、接近の仕方こそ違え、どちらも超越的なものに対する民衆によるアプローチを掬い取ろうする気運が感じられるのは面白いと思いました。
 銀座のエルメスと当店は歩けば15分ほどの距離でしょうか。ほとんどドミナント戦略かというぐらいの近さなので、エルメスでのお買い物ついでにお立ち寄りいただければ幸いです。


 
 
古来より神聖な動物とされる鹿と 
縄文土器片。おそらくエルメスでは
売っていないはずです。     



銀座メゾンエルメスの外部の壁面。



 

2016年3月2日水曜日

移ろい

3月4日(金)・5日(土)は所用のため17時30分に閉店いたします。
なにとぞご了承くださいませ。

6日(日)は東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。


 定かなるものなどひとつとないこの世で、いったい何を確定させようというのか、と訝りつつ確定申告書類を地元の税務署に提出してきました。書き込む欄はやたらとあるけど、自分の書類はいたってシンプル。受付の担当職員が一瞬怯むぐらいの余白感。
 そんなミニマルな気分に心を染められながら、東京ステーションギャラリーで開催中の『ジョルジョ・モランディ 終わりなき変奏』を見てきました。今回の展示を見るにあたって自らに課したお題は、モランディの”いい感じ”っぽさに引きずり込まれないこと。ぼんやりと光を放つような、あの静謐な画面に魅入られ過ぎることなくさっさと見て歩くこと。というわけで、立ち止まって色調や筆触を確かめたい誘惑を振り切って、「うむ!」とか「よし!」とか言いながら、わりと偉そうにズカズカと館内を横切ってきました。存在の移ろいをカンバスに定着させようとしたモランディの苦心を無視するかのようなこの見方は、しかし案外的を射ているのかとも思いました。薄紙を重ねていくように印象を留めながら見て歩けば、館内を50往復ぐらいするうちに、その印象はセザンヌのタッチの鮮やかさを見せるかもしれません。
 それでは、今週もよろしくお願い致します。



人は物を犇めき合わせて、モランディぶってみたい誘惑に駆られがちです。
犇めき合わせすぎた場合。