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2016年4月4日月曜日

遁世倶楽部

8日(金) 仕入のため14時開店
9日(土) 臨時休業
10日(日) 長野県松本市大手二丁目にある木工作家三谷龍二氏のショップ『10センチ』脇の空き地で開催される10センチノミの市に出店

どうぞよろしくお願いいたします。

 
 今となっては昔の話ですが、3月の中旬に出張と称して宮城県の鳴子温泉まで行ってきました。東京駅から古川経由で、陸羽東線を乗り継いで3時間足らず。しかしそれは新幹線というインフラストラクチャーの恩恵を蒙った場合の話で、自分の場合は予算上、高速バスを使わざるを得ません。そうすると、どうしても8時間はかかってしまいます。鳴子は奥の細道に縁のある土地、芭蕉の顰みに倣って徒歩で向かうのも一興ですが、かえって元手がかかりそうなので、妥協してやはりバスを使うことにしたのでした。
 23時40分東京駅八重洲南口出発のバスに乗って、6時35分古川駅着。駅周辺は、新幹線停車駅にありがちな何もないところです。何もないと言っても、もちろん電柱や電線、ビジネスホテルや七十七銀行の建物など、視界に入ってくるものはたくさんあるのですが、古川ならではのものを見出すことはできません。浅い睡眠で朦朧としながら、駅構内の待合室へ向かいました。

陸羽東線は宮城県遠田郡 小牛田駅〜
山形県新庄市 新庄駅 94.1キロを結ぶ
JR東日本の鉄道路線       


 待合室の窓から外を見ると、ときおりやって来るのは二両編成の陸羽東線。人間というのは二両編成の列車を目にすると、ただちに旅情をそそられる生き物です。思わずみちのくの空の下をどこまでも駈けて行きたくなりましたが、立ち上がると寝不足で足元がふらふらします。なにやら気分が悪く、腹が減っているのかいないのか分からない状態でしたが、「プロだったら飯を食え!」という山本小鉄の言葉が突然頭に浮かび、さっき見かけたタリーズに入って、トーストをもそもそと食べたのでした。
 列車の到着を待って、何をするでもなく座っているだけというのも、旅ならではの贅沢な時間の過ごし方。しかし考えてみれば、店にいる時もぼんやり座っているだけなので、これではいつもと変わらないことに気付いて、急に物悲しくなってきました。やがてやって来た列車に乗り込み、疾走する悲しみを携えて陸羽東線は鳴子温泉に向かいます。


どこまでも続くかのように見える線路。
列車を乗り継いでいけば、いつの日か夢の
カリフォルニアに辿り着けるかもしれません。

蛍光灯と壁面のパネルのコントラストの
侘しさが旅に来た実感を呼び覚まします。

 
 途中思うところあって、とか言って大して何も思っていないのですが、岩出山という駅で降りてみました。車窓から鉄道資料館の看板が見えてちょっと気になったのです。駅を出て隣接した資料館に入ると、手前は地場野菜やおみやげの販売、その奥に鉄道模型が設置してあるスペースがありました。オフシーズンの平日の午前中ともなれば、立ち寄る人など誰もなく、ひっそりとしています。あまりの侘しさに15秒ほど滞在しただけで脱出。堆積していく物悲しさと朦朧とした頭を抱えて、未踏の地を歩き始めました。
                                   (つづく)






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