ページ

2016年10月25日火曜日

眼と手

26(水) 催事宣伝行脚のため14時の開店となります

11/3(木・祝)〜12(土) 吉田伊豆写真展『風流文字』を開催
前日2(水)は搬入休をいただきます

11/19(土) 村上蕉雅さんによる花活けのワークショップ『古物に花活け』を開催
参加者募集中です

11/20(日) 東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします

12/9(土)〜13(火) 古道具イベント『点店4』開催


 先週の土曜日。Sezuan氏や長谷雄堂さんに後れを取り、焦って向かった谷保のギャラリーcircleで開催中の吉原航平「俗の術」。考えてみれば、べつに焦る必要もないのですが、そんな無用の焦燥を誘発しかねない何かを秘めているのが、この展示なのです。隣接する自然食食堂で腹ごしらえを済ませ、さてこの日の一番乗りかと思いきや、すでに先客が。様々な古物の催事で、まずたいていは先陣を切って会場に入ってくることで有名なコレクター氏でした。よもやこの手の展示会でも後塵を拝することになろうとは。
 


 蔵を改築したギャラリーの梯子を上ると、木炭で描かれたえも言われぬイメージの集塊が、壁一面にべったりと貼り付いていて度肝を抜かれます。ひとつひとつ見れば、土偶のようだったり、藁人形のようだったり、一刀彫の大黒さんのようだったりと、何かに見えはするのですが、聞けば実物を前にして写したものは一つも無いとのこと。これらはある日ある時、吉原さんが博物館や路傍や本で見たものが、脳内で熟成し、発酵し、場合によっては腐敗したヴィジョンの集積というわけです。モチーフは民間信仰遺品なのでしょうが、ほとんど日本人の信仰以前の古層に蠢く集合的無意識を可視化したかのようです。
 普通の人が目で見て驚くところを、画家である吉原さんは、その驚きを手でも感じているのかもしれません。木炭という、イメージを素早く定着させられる道具の特性によって、手の驚きが支持体に生々しく息づいているのが分かります。国立・谷保周辺の小中学校の美術教育として、ぜひこの展示を見ることをお薦めしたいところです。と言っても、教育関係者の誰もこのブログなど読んではいないでしょうが。会期は今月31(月)まで。ぜひ勇んで駆け付けてください。






1年7ヶ月ぶりの再開。やぼろじ在住のくーちゃん。
ニャーと鳴いて一応近づいてくるけど一定以上の距離は
縮めさせないというスタンスは相変わらず。     
      





 
 






2016年10月17日月曜日

いつものとおり

21(金) 仕入のため14時開店
22(土) 所用のため臨時休業
23(日) 乃木神社骨董蚤の市に出店

11月3(木・祝)〜12(土) 吉田伊豆写真展『風流文字』を開催


 土曜日に東京美術倶楽部の東美特別展に行ってきました。出展しているわけではなく、あくまで見物する側としてです。あわよくば、次の日に出店する大江戸骨董市向けの仕入ができたらいいなーと思って出向いたのですが、入って4秒でこれは違うと悟りました。ていうか、入る前から建物の威容を目の当たりにして、すでにここが別世界であることは分かっていましたが。欲しいものはいくつかあるも、手持ちのお金では足りないし、カード払いも限度額を遥かに越えているだろうから、その場はおとなしく見ることに徹したのでした。
 で、大江戸骨董市ですが、10月第3週というのは自分の経験上、すこぶる良い売上げが確保できることが分かっています。これは経験だけではなく、行動経済学的な観点からもある程度保証できる事実と言っていいでしょう。そして結果は、近年稀に見る惨敗。会社組織の営業責任者であれば、即僻地に左遷される事態。人間というのは、あまりにガッカリすると体内の糖分が著しく減少するようです。撤収後、失われた糖分を補うために、仕方なく浅草のフルーツパーラーゴトーへと赴きました。真夏時の行列はもはやなく、この時期ならすんなりと入れます。4種のぶどうのパフェ(税込1,380円)を注文しました。ジューシーで濃厚なぶどうとピオーネの自家製アイスの相性がとってもいいんですよ!と、取ってつけたような食レポを心の中で済ませ、暗くなった花やしきの前を通って、浅草寺を突っ切り、隅田川沿いのいつもの猫に挨拶をして家路についたのでした。


山形産のシャインマスカット、長野産のナガノパープル、
岡山産のピオーネ、アメリカ産のティムコの4種。

すっかり日が短くなりました。この日は満月。

2016年10月15日土曜日

答えは風に

16(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店
21(金) 仕入のため14時開店
22(土) 所用のため臨時休業
23(日) 乃木神社骨董蚤の市に出店

11月3(木・祝)〜12(土) 吉田伊豆写真展『風流文字』を開催


 小野寺公夫さんの展示会『漆工礼讃』には、多くの方のお運びをいただきました。また、宣伝告知に関しても様々な業種の方々からのご協力を賜りました。厚く御礼申し上げます。
 質素・堅牢・朴訥でありながら、洗練と上質を備えた小野寺さんの漆器に囲まれた日々が終わり、世に言うところの「公夫ロス」に罹ったようです。治癒させる手立ては、日々小野寺さんの漆器を使うことでしょう。今回自分は朱塗りの大椀を購入しました。いわゆる合鹿椀の形ですが、ケヤキの本堅地仕上げなので、見た目も手取りも頑健そのものです。店内で見るのと家で見るのとでは、空間の違いによる錯覚なのか、大きさの印象が変わります。箱から出したとたんに、デカい!と叫んでしまいました。こんな器でご飯を食べてたら、オバケのQ太郎か日本プロレス時代の豊登ばりの大飯喰らいと思われそうです。せめて無駄飯喰らいと呼ばれないぐらいには、精進してまいる所存です。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
 小野寺さんの質実剛健な漆器は、陶・漆・金工等を問わず、スタイリッシュな器全盛の東京(というか現代日本)の工芸シーンにおいては、異質で新鮮に映るかもしれません。あたかも現役時代の木村政彦が、タイムスリップして講道館に乱取り稽古をつけにやって来たかのようだ、と言えば分かりやすいでしょうか。むしろ分かりにくいですか。とにかく平地人を戦慄せしめるに足る凄い漆器です。どこかで見かけたら、ぜひ手に取って見てください。

小野寺公夫「朝鮮膳」
天板径39.7×高さ26.5×脚部径34.2センチ

材は栗。凄腕の木地屋さんとの連携で出来た作品。

反りや狂いを避けるために、天板は1枚ではなく
3枚を継いでいます。接合部が分からない超絶テク。
間もなく工房に返却いたしますが、お問い合せは
お気軽にどうぞ。              


 11月3日(木・祝)から吉田伊豆(よしだいず)氏の写真展『風流文字』が始まります。伝統工芸の次は現代写真。もはや何屋なのか分かりませんが、今さら言っても始まりません。お運びいただけましたら幸いです。





2016年10月8日土曜日

遍く照らし出す

10月12日(水)まで小野寺公夫の仕事『漆工礼讃』を開催中。
13(木)・14(金) 搬出休。

15(土) 仕入のため15時開店です。
16(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
22(土) 『詩について・対話篇 第9回』開催。16時半まで営業の予定でしたが、
所用により臨時休業いたします。
23(日) 乃木神社の骨董蚤の市に出店いたします。

インスタグラムもぜひご覧ください。こちらから→👃


 金曜日のこと。銀行に用があって京橋方面へ歩いていると、中央通りが交通規制で物々しい雰囲気になっていました。早々に用を済ませて、その足でゆで太郎に行くつもりだったのに、今さっき渡ってきた横断歩道が閉鎖されてしまい、通行不可で帰れず。いったい何事なのか。暫くすると、警察に先導された天蓋の無い大型車輛が、数多の男女を乗せてゆっくりとこちらにやって来ます。彼らは、首からぶら下げたキラキラ光る丸い物体を手に持って、それを時おり上方にかざしたりして、笑みを見せながら手を振っています。すると沿道に陣取った人々やビルの窓から顔を出す人たちは、一斉に歓声を挙げ手を振り返すのでした。何か大掛かりな民間信仰行事なのかと思いましたが、どうやらオリンピック・パラリンピックのメダリストパレードだったようです。というか、事前に告知の看板が出ていたから知ってはいたのですが、いかにも出会い頭という感じだったので、吃驚してしまいました。せっかくの機会ということで、メダリストたちのエナジーをお裾分けしてもらったつもりで店に戻ってきました。
 現在、漆芸家小野寺公夫さんの展示を開催中なので、ふだんの茶色っぽい店内は朱と黒に占められています。手間を惜しまず作られた漆器の佇まいが、さっき身に纏ったエナジーと融合して、不思議なオーラとなって逆光から漏れ出て、上空から八丁堀界隈を照らし出していると思い込みながら店番をしています。ご来店お待ちしております。


ワー。

ワーワー。

ワーワーワー。

史上最強と言われる柔道家が写っていました。
森岡さん・・?と思いましたが、違ったようです。

小野寺さんの汁椀が出来上がるまでの過程です。
最も堅牢と言われる本堅地による仕上げです。
まずケヤキの椀木地に生漆を塗り込みます。

生漆と米糊とケヤキの粉を合わせたものを付けて木地を
平滑にするのべ付けという作業。その後、口廻りや
糸尻、見込みなどを補強するための布着せを施します。

生漆、糊、木の粉を混ぜ合わせた惣身漆を篦で
付けます。それから地の粉、生漆、米糊を混ぜた
もので下地を付けます。地の粉の粒子を細かく、
米粉の割合を少なくしていって三回(三辺地)。 

砥の粉と生漆を混ぜた錆漆を付けます。
よく乾燥させた後、地研ぎの作業。
これで漆を塗るまでの作業が完了。

中塗り、本中塗り

上塗り。その後、節上げ(ゴミ取り)、乾燥。



民藝の教科書③『木と漆』グラフィック社
会期中は当店でお買い求めいただけます。
2,160円(税込)



 
 

2016年10月6日木曜日

鳴子イン八丁堀

10月12日(水)まで小野寺公夫の仕事『漆工礼讃』を開催中。
13(木)・14(金) 搬出休をいただきます。

22(土) 『詩について・対話篇 第9回』開催のため16時半で閉店。
23(日) 乃木神社の骨董蚤の市に出店いたします。

インスタグラムもぜひご覧ください。こちらから→👃

 漆器の椀を作るのに、口まわりのような消耗が激しい箇所には、下地を付ける前に布を張って補強するのですが、勝手知ったる木地屋さんだと、布着せの厚さを端から察して木地をひいてくれる、ということを小野寺さんから聞きました。1ミリも無いような厚さを調整するのは、なかなか熟練を要する技術でしょう。それを聞いて、小津安二郎の『麦秋』制作時の逸話を思い出しました。麦畑を斜め横移動で映すラストシーン、編集の浜村義康の仕上げを見た小津が、「1コマカットしたね。なぜだい?」「こっちがいいと思ったので。いけませんか?」「いや、良くなった。ありがとう。」というやり取り(うろ覚え)。延々同じような麦の穂が揺れる場面の1/24秒を見抜く小津と、継ぎ目なく繋いでみせる浜村の関係が、塗師と木地師のそれに近いと感じたのでした。
 さて、自分のような半端仕事の不調法人間には、そんないぶし銀のコミュニケーションが実現する機会は今のところなさそうです。そもそも古物商にとって職人的交流の発露とは、どのようなものなのでしょうか。そういえば、先日の骨董市での仕入で、こちらの懐具合を察してくれた相手が、何も言わずとも200円オマケしてくれたのですが、いま思えばアレがそうだったのかしれません。ちょっと違う気もしますが。
 店では、本当の職人の仕事が見られます。お運びをお待ちしております。

そういえば、ブログでは展示風景をアップして
いませんでした。年1回の仙台での展示や工房でも
見られないものを出していただきました。

椀や盆や箱たち




気になるものはお気軽にお問い合せください。



 
 
 
 

2016年10月1日土曜日

降臨

小野寺公夫の仕事『漆工礼讃』を開催中です。2(日)はついに小野寺さんが来京。
18時からささやかなお話し会を催します。伝説の工人が漆について語るその肉声を
聞けるまたとない機会です。
店舗は18時から貸切となります。ご了承くださいませ。


 どういう因果律が作用したのか、当店で開催する運びとなった小野寺公夫さんの展示会。『漆工礼讃』などと大きくブチ上げて、本日初日。なんとか無事に終了いたしました。以前より小野寺さんの作品に魅入られて買っておられた方、漆器はまるで分からないけれどDMから漂う美しさの予感につい足を運んでしまった方など、多くのお客様にご来店をいただきました。本当にありがとうございます。
 修業開始より57年、生真面目で漆ひとすじに生きてきたと聞けば、今どきの工芸シーンとは縁のない、取りつく島のないぐらい厳しい作風を思い浮かべるかもしれません。たしかに仕事には妥協を許さないのですが、それをそのまま見る側にも強要するような人でも作品でもありません。力強く艶やか、朴訥ながら洗練されていて・・と形容詞を連ねようと思えばいくらでも続けられそうですが、民藝発生期の初期衝動の純度を保ったまま、磨きをかけたような作品と言うと感じが伝わるでしょうか。小野寺さん本人は至ってふつうの気さくな方なので、あまりレジェンド扱いみたいなのは心外に思われるでしょうが。2(日)・3(月)の在店時には、ぜひ小野寺さんとお話しをしてください。実物を見て、本人の話を聞く。これに如くはないと思います。お待ちしております。


写真の不味さは如何ともし難いのでご容赦ください。
左:粥椀 口径11.6×高さ6.7センチ 18,900円(税込)
右:汁椀 口径11.4×高さ6.2センチ 16,200円(税込)
オーソドックスな椀です。何にでも使ってください。
堅地で仕上げる椀としては決して高価格ではないはずです。