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2018年1月16日火曜日

浄法寺の三つ組の漆椀

 調べものをしに開店前に東京国立博物館の資料館へ。と言うと、曖昧なままの知識をゆるがせにしない学究の徒のように聞こえますが、ほとんど暇つぶしみたいでした。せっかく来たからと、読めもしない資料を閲覧請求したりして、それっぽく振る舞った後は平成館の考古展示を一周。仁和寺展が始まったばかりで、今のうちなら空いてて見放題にもかかわらずスルー。連絡通路から本館に渡って正面から外に出ると、春のように暖かな日和です。上野の山は、なぜかすごい速力で噴水前を駆け抜けたり、奇声を発する人たちで賑わっています。この猥雑な雰囲気が名残惜しいので、お昼はアメ横ガード下、声に出して読みたい名店「珍々軒」でチャーハンを食べました。悠々自適、というよりは無為徒食といった感じです。
そしてこのまま、母なるガンジスの如き悠久の流れに身を任せて商品紹介です。

フィリップ・K・ディック的な光景 
鼓動が早まるような麗しき盛りつけ



 茶色い浄法寺の端反りの三つ組椀です。黒漆が透けてこんな色になっているのかと思いきや、高台内の黒塗から察するに、意図的にこういう色を出しているようです。ベンガラを茶色寄りに発色させたのか、海老茶のような色味がモダンです。そしてその高台内に黄漆で描かれた梅の絵が胸を打つポイント。かわいいですね!器型と色から密教法具の六器を思わせますが、用途のほどはいかに。ブナと思しき材を横木の柾目で取った量産型の工程なので、これといって特別な使い途を意図したものではなさそうです。やはり食器として作られたものでしょうか。それでも端反りという、本来は金属器の強度を保つ必要に応じて生まれた形が漆器に写されると、どこか神聖な雰囲気を帯びて見えます。陶磁器ほどの共通見解が漆器にはないので、どうしてもひとりよがりな意見になりがちですが、とても魅力的なお椀です。


『浄法寺三つ組椀』江戸時代

一の椀 口径12.4〜12.8×高さ7×高台径5.7×6センチ
二の椀 11.8〜12.2×5×5.5〜5.6センチ      
三の椀 10.7〜11×2.5×4.4〜4.5センチ      




一の椀口縁に割れが走ってますが止まっています 
断文もきれいに出ています

黒漆の上に茶漆(ベンガラ?)を塗っています

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