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2018年4月4日水曜日

古参たち

 早くも卯月。心機一転の季節。第一四半期を終え、通期業績予想の修正が重く懸案としてのしかかってくる昨今、業者同士も寄ると触るとその話題ばかりです。というのはもちろんウソで、自分なんかは通年でたいてい月の支払いとおやつの話しかしてません。そんな暢気な人にも等しく新年度は巡ってくるわけで、この時期ばかりは何か本気のエナジーが充填された気になるものです。
 さて、店内を見ると、腰を据えていつまでも動きそうにない物たちがいます。稀少な物ですが、珍品すぎて却って物欲をそそらないのかもしれません。欲望とは他者の欲望である、とラカンが言うように、誰も欲しがらなければ市場は成立しません。とはいえ、心機一転を謳うのならば、古参にもいいかげん旅立ってもらわなければなりません。というわけで、二点のご紹介。

円筒下層式土器。これはずいぶん長くいます。当店の最古参でしょうか。実際とても古いもので、この土器がこの世に生まれたのは、時代区分で言うと縄文時代前期後葉ですから、5500〜6000年前ぐらいですか。100歳が60人分。というと、たいした感じがなくなりますが、100歳の翁・媼が数十人、グレイシートレインのように肩を組んで一列縦隊で路地を通過していったら、悠久の時を思わせやしないでしょうか。青森南部の是川近辺の出土で、かつては保存容器にでも使われたものかもしれません。やがて土の中で眠ること数千年、時を経て再び地上に現れ幾人かの手を渡り、いまは何のゆかりもない八丁堀の場末に鎮座しております。
縄文土器と言って思い浮かぶ、火焔土器の過剰な装飾や亀ヶ岡式の多様な文様はありません。至って地味。なので、縄文が好きだという人に見せても、歯牙にもかけない態度を取られることがあります。逆に古物に関して目に一丁字もない人が、その簡素な美しさに感動してくれることもあります。
考古発掘物の中でもことさら古い部類ですので、疵は当然たくさんありますが、7割5分以上がオリジナル。かなりの残存率です。岡本太郎が絶賛した破調の美以前の美。

円筒下層式土器
縄文時代前期後葉(B.C.3,500~B.C.3,000年)
口径16.5×高さ22.5×底径12.5センチ






撚糸文に鏃を連ねたような文様。遠目だとまるで古木の樹皮に
見えます。

90,000円

参考までに東京国立博物館所蔵の同手の物
市場に出ることはほとんどありません

もう一点は南米ペルー古代文化、モチェの紡績の道具。これもベテランです。開業前からいますね。布を織る際に緯糸を整えるものだそうですが、具体的な作業工程は分かりません。モチェは紀元前後から7世紀頃に、現在のペルー北海岸部に栄えた文化です。同時期にメキシコ南東部で発展したマヤ文明と違って文字による記録が無いため、往時を知るにはこれらの出土遺物を見るしかないのです。というと、とても貴重な物に思えてきますが、実際に類品を日本で見ることは稀でしょう。織物は金銀と同等以上の価値を持っていたそうで、それを作り出す道具も特別なものであったはずです。



モチェの紡績の道具
紀元前後〜7世紀頃
長さ34.3×最大巾4.8センチ


トカゲと思われる生き物が線刻されています。トカゲは
モチーフとしてよく使われたようです
たしかに特別な道具であったことが伺えます



枯れ切った古民具のような味わい
柳宗悦が欲しがりそうです

25,000円

以上です。お問い合わせはどうぞお気軽に。メールが確実です。それでは新年度もどうぞよろしくお願い致します。




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